~あとがき~

私の考えた具体案は実際の国交正常化の条文としてふさわしいかどうかは分かりません(そもそも拉致問題解決に国交正常化が必要かどうか、ということもありますが割愛)。ただ、拉致被害者奪還にプラスとなるような、現実的な圧力となるような内容に改めるべきだと思います。詳細情報を持っていない日本が拉致被害者の「全員」奪還を目指すのであれば、様々な困難を想定し、切り返す手を用意しておくべきではないでしょうか。

 
そして仮に、日本政府がこの具体案とまったく同じ手段を取ったとします。そうすると日本国内の左から右から激しい非難が飛び交うことになります。
左からは北朝鮮に対する圧力、経済支援額の削減、謝罪史観の削除、などに対する不満が。左翼は右翼と違い狡猾です。平壌宣言のままに従った方が国益に適うかのような工作を展開するでしょう。そして対極の右翼は正しい報道が無いため戦略性を持つことができず先鋭化します。
例えば右からは「そんな経済支援を約束していたなど聞いていない!」「せっかく破棄したにも関わらず、あらためて1兆円の無償経済援助をするとは何事か!」「金で人質を取り戻すのは誘拐犯に対する原則に反する!経済支援はせずに拉致被害者を全員取り戻せ!軍隊を出動させろ!」
このような理想論の噴出が想像できます。安倍政権が平壌宣言を隠蔽することにした理由にはこのような右派の理想論を抑えきれないことを想定したからではないか、とも考えます(そもそも正しい情報を与えられなかったために、戦略なき極論がはびこるようになってしまったとも言える訳ですが…)。
 


北朝鮮への経済支援は免れない―
また前提としてこれがあると思います。安倍政権が近年まで封印していた難民問題という課題。朝鮮半島有事は、北朝鮮から最大で10万人~15万人という難民が日本に押し寄せてきます。


朝鮮半島有事 10~15万人の北朝鮮難民が日本に流入か>
2007年、日本政府は、朝鮮有事で日本に流入する北朝鮮難民を10万~15万人と見積もった。これに韓国の避難民が加われば日本の治安当局の機能は麻痺。難民の暴徒化や、北の武装難民が上陸することも考えられる。」



今ヨーロッパで起きているような問題に対し日本としてどう向き合うか。それほどの難民を収容するだけの収容所はなく、収容所があったとしても左翼人権派が野に解き放つようデモを各地で展開し、そもそも着岸の時点ですべての難民を管理しきれるかどうかも怪しく、難民に紛れ込んだ武装工作員も大いに懸念。
安倍総理は、保護・上陸手続き・庇護すべきものに当たるか否かのスクリーニング(難民と工作員の選別)を検討していると明らかにしましたが、これだけの人数をスクリーニング可能なのか(朝鮮語が話せて選別する訓練を受けた人材が相当人数確保できるのか)、といった疑問の声もあがっています。
難民問題の解決手段として、北朝鮮への経済支援を行い安定化、難民発生を最小限に食い止めて早期帰国を促すことの検討。1000人を超すと言われている拉致被害者よりも、12000万人いる日本本土の治安維持を最優先に考えているのではないでしょうか。拉致問題解決を訴えると同時に、こういうことも考える必要があると思います
 
安倍総理は「日朝平壌宣言は不意打ちだった」と不満を漏らしています。しかし今に至っては破棄はおろか禁句です。与党内や自民党派から破棄すべきとの声は聞いたことがありません。拉致被害者全員の奪還は、今まで述べてきたような様々な理由から有効な戦略転換は出来ないでいるのが現状ではないでしょうか。事情は分からなくもないのですが、私は一平民で最大の関心事は拉致被害者を全員取り戻すことです。
拉致被害者「全員」奪還ツイデモに携わった者として、日本政府には解決に有効な日朝平壌宣言の破棄をして欲しい、と切に思います。