日韓基本条約は日朝国交正常化無効の根拠とはならない



日韓基本条約において、韓国を朝鮮半島における唯一の国家と認めているので日朝国交正常化はありえない、だから日朝平壌宣言破棄は言わなくても良いのだ、とする意見を拉致問題に取り組む界隈で見かけます。


であれば、なおのこと実行不可能な日朝平壌宣言は破棄してしまえば良いと思うのです。内容に至っても「国交正常化したら拉致の再発を防止します」ということは、逆を返せば国交正常化をするまでは拉致が起きることを認めているようなものですし、なにより拉致被害者の生還は約束していないのです。


 拉致問題の解決を望む草の根保守がこれを大事に守る方向に唆されている姿を見ると、戦後レジームの完成は近いのだな、と思わざるを得ません。国家の尊厳を傷つけられる行為を、保守を自認する国民が推し進めるのですから。



 
 それはさておき、日韓基本条約によって日朝国交正常化をどの程度妨げるかを現実的に考えていきます。


1.日本国内から見た場合

2.周辺国から見た場合

3.日韓基本条約の相手、韓国から見た場合


 


1.日本国内から見た場合


~日朝国交正常化(日朝平壌宣言)は国家間の約束である~


 小泉純一郎金正日、日本と北朝鮮の両首脳が調印した国家間の約束です。当然官僚たる外務省が御膳立てをしていますし、ODAに寄生する経済界にとっても、北朝鮮が望む限り永遠の経済支援である=永遠に援助ビジネスにあやかれる、ということで大賛成です。


また、日朝国交正常化により北朝鮮羅津港が開くことは、環日本海経済圏構想に賛同する日本海側の地方自治体も大賛成です。日本国内において反対する勢力はありません。国民という個で考えてもまともな左派がほぼ存在しない以上、大多数の左派は賛成でしょう。あとは大多数の保守が白紙委任する安倍総理が決断してくれればことは粛々と進みます。安倍政権の国会での回答は「日朝平壌宣言を守る」です。


日本国内は日朝国交正常化にほぼ賛成といって良いです。日朝国交正常化を危惧・反対し、平壌宣言の破棄を訴えている稀有な存在はごく少数でしょう。言及を忘れるくらい日韓基本条約第三条は忘れられています。



 
2.周辺国から見た場合


~核・ミサイル問題が決着すれば日朝国交正常化は約束である~


 六者(日米韓中露北)協議は、北朝鮮と周辺国における核・ミサイル問題の解決のための会議であり、問題解決の暁には米朝国交正常化と「日朝平壌宣言に従った日朝国交正常化」が対価として北朝鮮に約束されています。

 


アメリカが進める金正恩「転覆計画」の全貌


『この問いに対しては、ラッセル次官補は、やや表情を和らげて答えた。

「日本は小泉(純一郎)政権時代に(20029月)、北朝鮮と『日朝平壌宣言』を交わし、国交正常化を実現しようとした。その際、国交正常化したら、35年の植民地支配の賠償に代わる措置として、北朝鮮に多額の経済協力を実施することになっていた。その経済協力をお願いしたいのだ。』


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51039?page=2


 
 拉致問題が解決せずとも、核・ミサイル問題解決の暁には日朝国交正常化を求める圧力が周辺国からかけられることになります。日朝平壌宣言による北朝鮮への経済支援は、国境開発にも多額の援助が見込まれるため、北朝鮮と陸続きの中露韓はこの経済支援を心待ちにしているでしょう。


  


3.日韓基本条約の相手、韓国から見た場合


~そもそも韓国が日朝国交正常化を反対しうるのか~


 近年、従米の朴政権が終わり、従北の文政権が誕生しました。先の周辺国に関連していえば、朴政権下であれば米国の圧力に従って日朝国交正常化を了承したでしょう。また、あえていう必要もないですが、従北の文政権も日朝国交正常化に反対するはずがありません。日韓基本条約を改めることなど造作もないでしょう(そういえば過去、従北の金大中が日朝国交正常化に賛成していたような気がするのですが・・・)


  


国内外の状況をあらためて考えてみて、やはり核・ミサイル問題が解決してしまうと拉致問題を置き去りにした日朝国交正常化は始まってしまうと言わざるをえません。また、日韓基本条約そのものも、日朝国交正常化を阻害するものではなくなってしまったように思います。



日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約

(通称:日韓基本条約)


第三条


大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(Ⅲ)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。


 

 韓国は国連が認める唯一の合法的な政府であることを確認した、ということです。1947年当時は合法的な政府と確認できるのが韓国だけだったかもしれませんが、1991年に韓国と北朝鮮が国連に加盟しました。

 日本国民が認めたくなくとも北朝鮮は国です。




 それにしても、こんな精神勝利法で草の根保守を騙したのはいったい誰なのですか。出どころが外務省と伺っていますが、それが本当だとしても阿南惟茂、槇田邦彦、田中均ら歴代アジア大洋州局長を輩出し、国交正常化のためなら国民をも見殺しにする外務省の言を鵜呑みにしてはならないと思います。