~逆から考える拉致問題、日朝国交正常化②~

 


以前、ブログで書ききれなかった続きです。
逆から考える拉致問題、日朝国交正常化①

【特定失踪者は存在を黙殺し、取り戻せてから認定する。取り戻せなかった特定失踪者は存在しなかったことにする】


 前回は日朝国交正常化にあたり、安倍政権が認定拉致被害者についてどう決着をつけるかを考えてみました。今回は特定失踪者についてです。


 1000人近い特定失踪者の中には、認定拉致被害者と遜色ない証拠がありながら政府認定されていない人から、拉致の可能性が否定できない人まで様々です。すべての拉致被害者の確実な証拠は、拉致被害者を手中に収める北朝鮮にあります。それゆえ私はブログで、「北朝鮮が自発的に拉致被害者を帰さなくてはならない方法」「全員帰国まで持続性を持って交渉可能な方法」を模索しました。


 特定失踪者を全員帰してもらうことは非常に困難なことです。が、逆に、特定失踪者を諦めることは容易です。認定していないのですから、「いなかった」ということにすればよい。限りなく黒に近い証拠はあっても、「いなかった」ことにすればよいのです。

 あるいは、北朝鮮と打ち合わせて、(北朝鮮にとって)帰しても差し支えない特定失踪者について、日本国内で見つかったことにすることも有効です。そうすれば他の特定失踪者について、「やはり拉致ではなかったのではないか?」という雰囲気を醸成することが出来ます。これで多くの特定失踪者の存在を薄くすることが出来ます。日朝国交正常化も大きく前進することでしょう。
 方法として考えられるのは、


北朝鮮が特定失踪者の存在を薄くするために極秘裏に日本国内で解放する
・日本政府が特定失踪者の中の、発見できている行方不明者を公表する
・あるいは日本政府が発見できている行方不明者を特定失踪者に潜り込ませる

 などでしょうか。上記のような出来事が起これば、他の多くの特定失踪者が「思い込み」として世間の関心から失われていきます。私は特定失踪者の中から、日本国内で発見される人が出てくるのではないかと危惧しています。

 国交正常化の間際に、「北朝鮮から十数人、特定失踪者が帰ってきた」「特定失踪者とされていた人が国内で発見された。ただの行方不明者だった」「先日、行方不明者の特番をやっているのを観た。記憶喪失で遠いところで発見されたらしい」
 こんな雰囲気が出来てしまえば、多くの特定失踪者が見捨てられてしまいます。

 3年近く前に、こんなニュースがあったことを覚えてますでしょうか。

北朝鮮拉致じゃなかった!「特定失踪者」19年ぶり西日本で発見・・・福井の51歳男性

 この51歳の男性が北朝鮮に拉致されていたとまでは断定しませんが、国交正常化間近になり、拉致問題の関心が再浮上するときに、上記と同じようなニュースが報道されれば拉致問題は追及しづらくなり、世間の関心は低下します。

 日本国民が拉致問題に関心を持たなくなれば、拉致被害者家族も声をあげづらくなります。左翼勢力がヘイトだと騒げば、ますます話題にもしづらくなります。保守勢力のデモは中止に追い込まれ、左翼勢力のデモは野放しとなれば、世論は拉致問題から目を背けるようになるのではないでしょうか。

 また、これまで日本政府が拉致に関する情報を公表してこなかったことも、拉致問題を葬り去ることに寄与しています。

 今まではうかつに情報を出すことによって、世論をコントロールすることが出来なくなることを怖れて、慎重に扱おうとしてきたのだと思われますが、今現在の様に国交正常化を果たさなくてはならない状況となると、積極的に隠蔽していかなくてはなりません。
 まとめると、

拉致被害者の命は北朝鮮が握っている。どんなに圧力を掛けようが、帰すか帰さないかは北朝鮮の判断でしかなく、下手に情報を公表し、拉致被害者認定し、その上で取り戻すことが出来なければ、国民の反対の声が大きくなってしまって国交正常化どころではなくなってしまうため、情報は出さないことにする。

 帰国が決定した拉致被害者に関してのみ、後出しで「水面下で交渉を続け、拉致の証拠を突き付けた結果、取り戻せた」ということにすれば、むしろ評価も得られやすい。』

 今の安倍政権の目標は、「一人でも多くの拉致被害者を取り戻すこと」ではなく、「一人でも多くの取り戻せなかった拉致被害者が出ないこと」なのです。下記にもう少し分かりやすく書いてみます。

※人数はあくまでも仮です。

①日本政府が拉致問題において積極的に交渉

日本政府は拉致の疑いのある特定失踪者1000人を拉致被害者として認定し、北朝鮮との交渉に及んだ。その結果、200人は取り戻せたが、800人は取り戻せなかった
⇒日本国民「拉致被害者800人も返さない北朝鮮との国交正常化なんてあり得ない!」


②日本政府が国交正常化を優先して拉致問題を積極的に隠蔽
日本政府は現状と変わらない方針で北朝鮮と交渉に及んだ。認定拉致被害者数人と特定失踪者数十人を取り戻した。取り戻せなかったのは死亡したとされた認定拉致被害者数人のみ
⇒日本国民「安倍総理拉致被害者は亡くなっていたと言うし、結果的に小泉政権の時よりも帰ってきた人は多かった。テレビでも拉致は思い込みだと報道していたし、拉致問題は解決したみたい」

 ②の方が、国民感情としては国交正常化のハードルが低いと思います。


 しかし、今まで安倍政権を支持してきた人たち、言論人、政治家などは、この結果で納得するわけにはいきません。特に安倍政権を支持することを商売としてきた言論人は、今まで散々、拉致被害者はもっといる、拉致被害者が帰ってくるまでは国交正常化などあり得ない、安倍政権ならやってくれる、と言っていただけに、振り上げた拳の落としどころが必要となります。
 それゆえ、出口論が出てこざるを得なくなるのではないか、と考えます。
 まとめると、

『特定失踪者も数十人取り戻せた。これは水面下の交渉の結果だ。今後は国交正常化後、現地調査などを重ねてさらに取り戻すという、安倍総理の秘策があるらしい。莫大な経済援助も、北朝鮮をコントロールするためだ。こちらの思惑通りに事は進んでいる。惑わされずに安倍政権を支持していこう。安倍総理の他に誰がいる?』


 こんな感じでいかがでしょうか。

 それにしても、安倍総理自身は特定失踪者をいないものとして扱ってきたので、やはり本丸に傷はつかなそうです。安倍総理が特定失踪者家族に関わったところを見た覚えがありません。支持者が勝手に討ち死にしてくれますが、結果の出せない政治家をそんなに守る必要ありますかね?

 安倍政権の側に立ったつもりで、日本国民を騙す方法を書いてみましたが、さすがにこうは上手くいかなそうな気がします。日韓国交正常化も、日中国交正常化も、その時はここまで国民感情が悪くなかったと思うのです。しかし北朝鮮は、核・ミサイル・拉致があり、そして非道な独裁政権のままなのです。そうすんなりいくかどうか…。
 米国と中国の両方と渡り合える政治家は見当たらないので、いずれにせよ日朝国交正常化は強行されるでしょうが、その後も安倍政権が支持されるのは難しいと思いますし、長引けば日朝国交正常化よりも安倍政権が倒れる方が早くなりかねません。安倍政権としては何か大きなガス抜きが欲しいところじゃないでしょうか。
(もう嫌韓だけじゃホシュも物足りないでしょう)